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掲載日:2023.3.10
最終更新日:2023.10.17
【後編】「アスリートとして死んだ自分」をどう活かすか。引退、復帰、会社員を経たオリンピック選手が語るパーパスの重要性
女子ホッケー日本代表として2008年そして2016年と二度のオリンピックに出場、2018年にはアジア大会初優勝に貢献した小野真由美さん。一度は第一線を退くも、再び競技の世界へ復帰するバイタリティは、引退後の今も垣間見えてきます。常に前へ進もうとする小野さんに、これまでのアスリートキャリアから今後見据えるビジョンまでを伺いました。
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INTERVIEWEE
小野真由美(SOMPOケア株式会社 広報部 チームリーダー / 日本ホッケー協会 アスリート委員 委員長)
interviewer: Daisuke Yamamoto
writer : Moeka Kawai
会社員に監督、理事…四足のわらじを履く日々

前編はこちらからご覧ください。

 

― 小野さんは現在、会社員という枠にとらわれず、様々な活動に携わられていますね。

 

2018年に二度目の引退を決めてすぐ、東京ヴェルディという新しいチームがあること知りました。そこで「東京でもホッケーができるなら」と加入を決意したんです。2023年1月までSOMPOケアで会社員をしながら、東京ヴェルディの監督兼選手として活動をしていました。

 

ただ、私に限らず選手たちも普段はそれぞれの職場で仕事をしています。あくまでも仕事が優先で、空いた時間でホッケーをしている状況です。しかし、東京ヴェルディは日本リーグに加盟しているチーム。決して趣味の域で終わらせるわけにはいきませんでした。仕事と競技の両立が求められていますし、その部分のマインドはこれまでの「競技だけ・仕事だけ」というものとは変えていかなければならず、かなり苦戦しました。

 

他には静岡県ラグビーフットボール協会と、日本ホッケー協会でも理事をさせていただいている状態です。

 

こうして振り返ると、大変な2年間でした。

将来を悩んでいることは、決してかっこ悪いことではない

-会社員になられて5年が経ちますが、仕事において小野さんが大切にされていることはありますか?

 

SOMPOケアでは職員一人ひとりの「パーパス(目的)」を大事にしているのですが、私自身もこれを大切にして仕事をしています。このパーパスとは、「仕事を通して何を達成したいですか、人生における『目指したいもの』は何ですか」という部分です。

 

何のために仕事をしているのか、目的が無ければ易きに流れてしまう。逆に、人生の中でパーパスを育て、その目的のもとで動くことができていれば、仕事においても居場所ができると思うんです。

 

デュアルキャリアということも言われていますが、もしそれを考えるのであれば「この会社で何をしたいのか」をきちんと考える必要があると思います。覚悟を持って企業に入ったのなら、自分はそこで何を達成したいのかを明確にするべきです。仮に「給料が良いから、待遇が良いから」というだけで入ったら後悔するんじゃないかなと思います。

 

― 「何をやったらいいかわからない」と路頭に迷うアスリートに対して、先輩として何かアドバイスはありますか?

 

焦って次を決めようとすると、本当にやりたいことが定まらないのではと私は思うんです。価値観を模索する時間は必要ですし、悩んでいることって決してかっこ悪いことではないですよね。焦って進んで、すぐに辞めてしまうことの方がかっこ悪いですし、組織に対しても迷惑かもしれない。

 

それよりも、自分が歩んできた道と見聞きしたものを照らし合わせながら、決して焦ることなく考えた方が良いのかなと。人によってタイミングは違いますからね。

 

そうは言っても、引退した時点でアスリートとしては死んでいる、選手としての寿命は終わっていると私は考えています。ただ、その「アスリートとして死んだ自分」を活かすかどうかは自分自身にかかっていると思います。

また、「自分の業界だけに閉じない方が良い」ということを伝えたいです。自分と同じ業界の人とばかり話していると、引退後の価値観を模索するうえで広がりが出ないと思うんです。だから、自分のいた業界以外の人とも積極的に話してほしいですね。

 

自分が今までやってきた競技の中で輝きたいのか、それとも全く違う場所で活躍したいのかは、自身でもわかると思います。もし違うフィールドで輝きたいのなら、そのための方法を色々な人と接点を持つ中で見極めてほしい。私が海外で半年間を過ごしたのもそうですが、後悔しないためにはゆっくりと考える時間も必要だと思います。

今後のビジョン、ホッケー界での夢

― ありがとうございます。会社員としての小野さんは介護の世界にいらっしゃいますが、今後のビジョンはありますか?

 

広報部として、これまでの介護のイメージを変えられるような発信をしていきたいです。これまでに経験したことのない緊急事態宣言時には、感染のリスクがありながらもご利用者のために懸命に働く現場の皆さんの姿に私も感銘を受けました。日々の業務の中でご利用者に向ける笑顔一つとっても、受け手の方の人生に常に寄り添っています。

 

介護の仕事の価値を高めることが私のパーパスです。

 

それを達成するために、私もできるだけ現場に出ていこうと考えています。例えば社内認定のインストラクター資格を取得しているので、事業所へ行って体操することなどを実践しています。もちろん広報部として、社内報などを通じて社外へ向けても発信することを増やしていきたいですし、自分でできることを模索している最中ですね。

― ホッケーの分野ではいかがでしょうか?

 

将来的には指導者になりたいと考えています。

 

「指導者として自分の経験を選手に還元していきたい」と思っているのですが、あいにく今の力では足りないことも分かっています。幸い自分の周りには様々なコミュニティがあるので、そこも活用しながら勉強したいですし、指導についてより深く学ぶために海外にも行きたいです。

 

パリの次、ロサンゼルスオリンピックの時にはコーチなどとして現場にいることができたら、何より最高ですね。

 

仕事における目標と人生における目標の2つがやっと見つかりました。

小野真由美(おの・まゆみ)

1984年8月14日生まれ。富山県小矢部市出身。

10歳でホッケーを始め、小矢部市立大谷中学校では全国優勝。高校・大学と活躍を重ね、2007年にコカ・コーラウエストレッドスパークス(現コカ・コーラレッドスパークス)へ加入。2008年には北京オリンピック、2016年にはリオデジャネイロオリンピックにも出場する。アジア大会には5大会出場し、2018年のアジア大会では初優勝に貢献。現在はSOMPOケア(株)広報部にて勤務する傍ら、日本ホッケー協会 アスリート委員 委員長も務めている。

CREDIT
interviewer: Daisuke Yamamoto
writer : Moeka Kawai
photographer : Fumitaka Nakagawa
editor : Takushi Yanagawa
director : Yuya Karube
SPECIAL THANKS
SOMPOひまわり 広報部 部長 植松麻紀子さん
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