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掲載日:2023.3.1
最終更新日:2023.3.3
「アスリートは努力を積み上げる天才。」奇跡の琉球アスティーダ社長の考えるアスリートのキャリアサポート
プロ卓球Tリーグ所属「琉球アスティーダ」の運営をはじめ、スポーツバル・ジム・卓球教室など多角的な経営に手腕を発揮する早川周作さん。学生起業や衆議院選出馬など、若い頃から多彩な経験を重ねていらっしゃいます。 2021年3月には、自身が社長を務める琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社がプロスポーツチームとして国内初の上場を果たすなど、日本のプロスポーツ業界に新たな流れを生み出しています。 そんな早川社長が語るアスリートのセカンドキャリア問題とは?
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INTERVIEWEE
早川周作(琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社 代表取締役)
interviewer: Isako Yamazaki
writer : Rieko Narita
結局、やってみてからわかったことがほとんど

―早川社長は、プロスポーツクラブの立ち上げをはじめ、学生起業や衆議院選出馬など、若い頃から多彩なご経験を重ねていらっしゃいます。ご自身にとって人生のターニングポイントとなったできごとを教えてください。

 

ターイングポイントとして特に大きかったのは学生起業したときです。それから、首相秘書となり28歳で衆議院選挙にでたとき。これらが僕の人生を大きく変えたと思います。

 

当時、学生で起業する人はかなり珍しく、動き出すのに躊躇はもちろんありました。でも20代で選挙に出ることを考えると、起業するしかなかった。必要な人脈やお金を考えたら、普通の勤めをやっていてもチャンスは絶対にないわけで、自分の想いを叶えるためにはやらざるを得なかったのです。

 

選挙の結果は次点落選となりましたが、その後も新しい分野への挑戦を続けています。すべては経験だと思っています。一度限りの人生、やってみなきゃ分からないことがほとんどじゃないですか。不安もありますが、やってみたら何とかなったりして、動き出して初めて分かることがたくさんあります。

スポーツの世界に固執せずに、努力の方向性を調整するべき

―引退後はコーチやフロントスタッフとして残りたいと話すアスリートも多くいます。スポーツ界に残る選択肢をリスペクトしつつも、もっといろんな世界の可能性を考えていただきたいとも思います。

 

子供時代から25年、30年の人生をかけてきた延長線上でセカンドキャリアをと考えるのは、当然だとも思います。しかしそれだけではなく、一歩引いた視点で自らがやってきたスポーツを振り返り、新しいことにチャレンジして欲しいですね。

目の前に現れたチャンスを、ためらうことなく掴み取り、努力と苦労を重ねてきた。現在は80社もの顧問会社をもつ傍ら、夢をもてなくなった大人たちへのサポート活動にも力を注ぐ。

 

アスリートは正しい努力の仕方を知っていて、努力の積み上げができる天才だと思っています。しかも強い選手であればあるほど、むやみやたらに努力するのではなく、同じ練習量でどう効率的にパフォーマンスをあげるかを考えています。試合の事前準備と事後の振り返りがしっかりできて、自分の勝ちパターンを理解できている。そして試合後の身体のケアも怠らない。

 

この力は事業においても同じように発揮されるはずです。例えば商談ひとつでも結果の良い・悪いに対して、「問題」の部分を抽出して課題を明確に見通すことができ、次の商談では改善できると思うんですよね。

 

努力して結果を出してきたアスリートだからこそ、次のステップでは努力の方向性を変えるだけでいいわけです。スポーツの世界に固執せずに、自信をもって挑戦して欲しいです。動くことはリスクを分散すること。結果的に新しいものを生み出すことにつながります。

頑張ってきた選手に対し、チーム側も責任を持つ仕組み
自身が社長を務める卓球のプロチーム、琉球アスティーダ。2020-2021シーズンのTリーグにおいて、初優勝を果たした。

 

―現状では卓球選手のセカンドキャリアは、どういったケースが多いのでしょうか。

 

2018年にプロリーグが立ち上がる以前の卓球界は、実業団が主でした。ですから卓球選手のセカンドキャリアについては、少し前のラグビーなどと同じように引退したらその会社に勤める人が多かったと思います。

 

引退後の進路やセカンドキャリアへの考え方は人により様々ですが、僕は「卓球しかできないよ」という形で引退を迎えてほしくないと思っています。

 

我々のチームでは、現役中から英会話やビジネスの感覚などに触れることのできる機会を提供しています。また飲食・卓球教室のフランチャイズなど、選手が引退したときに安心して生活できる環境作りのサポートに着手しています。これらは拙著『琉球アスティーダの奇跡』でも触れていますが、現役時代だけではなくて、セカンドキャリアにおいてもチームとして責任を持てる会社作りに取り組んでいるところです。

 

琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が多角的な事業展開をしているのには、選手の受け皿をつくるという目的もあります。我々は設立してまだ4年のチームですが、引退する選手は今後どんどん出てきます。

 

一生懸命頑張ってきた選手に対して、チーム側も責任を持つような仕組みを整えることによって、ちびっこアスリートも安心して競技に打ち込めるというのもあるのかなと。アスリートをサポートする体制を作ることは、本当に重要なことです。

アスリートが心を開けるサポートが必要
張本選手のチーム加入が発表された。移籍の決め手は早川の熱意と、チームから選手へのリスペクトの強さだったという。

 

―日本ではこれまで、アスリートのセカンドキャリアサポート事業が継続的に運営されることはあまりありませんでした。その背景にはマネタイズの難しさもあったかと思うのですが、早川社長のお考えはいかがでしょうか。

 

個人的な見解ですが、スポーツの世界から会社に入る時には、今まで認められてきたものが否定されるように感じるアスリートもいるはずです。

 

そのため、スポーツで頑張ってきた選手たちが、なかなか心を開けないままでマッチングが進んで、結果的に適正な転職へのサポートができていない可能性があるのかなと。

 

転職エージェントも「スポーツをやっていて根性があるはずだ。だからこの人は営業へ。」とか「社長が同じスポーツの出身者だから就職しやすい。」といったことだけで判断してしまい、相性があっていない会社に入ってしまうこともあったのではないでしょうか。

 

パーソナルスポーツの選手などは自分の力で生きてきたという人間も多いので、独立をさせてしまった方がいいと思うんです。「転職」という選択肢しか提示できず、その結果としてマッチングミスが起きていることが、大きな問題なんじゃないかと思います。

 

アスリートは結果を残してきたプライドもある、努力ができる天才です。選手が自分の心を開いてしっかりと話ができるサポーターが、今のスポーツ界にすごく必要だと思います。

 

チーム作りも同じですが、「絶対にこの人を信じてもいいんだ」という関係性を作ることがなによりも大切なことですね。

トライアスロンチームの運営に関わる一方で、自身も競技に挑んでいる。

 

早川周作(はやかわ しゅうさく)

秋田県出身。建設業を営む裕福な家に生まれ、何一つ不自由のない少年期を過ごすが、大学受験の直前に実家の建設会社が傾き、借金の取り立てを受けて父親が蒸発。早朝の新聞配達から深夜の皿洗いまで、アルバイトで学費を工面し、明治大学法学部に進学する。学生時代は、起業家として多くの会社の立ち上げに参画した。大学卒業後は、舞台を政治に移し、元首相の秘書を経て衆議院議員総選挙へ出馬するも次点で落選。再び挫折を味わうが、捲土重来を起こすべく立ち上がり、ベンチャー企業対象の異業種交流会「ベンチャーマッチング交流会」を主催する一方、講演会やセミナーを開催し「ハンディがあっても、何度失敗しても、コネがなくともチャンスが与えられ、若者が夢を持てる社会にしたい」 と活動している。

東日本大震災の後に沖縄県へと移住し、2018年に開幕した卓球プロリーグのTリーグに所属する琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社を創設。同社はプロスポーツチーム運営会社として日本初、株式をクラウドファンディングで調達した企業としても日本初の東証TOKYO PRO Marketへの上場を果たす。また同社が率いるプロ卓球チーム「琉球アスティーダ」を創設3年目にしてTリーグ優勝に導いた。2021年には子会社となる九州アスティーダ株式会社を設立、Tリーグ女子チームに新規参入する。また、同年10月には、プロ野球独立リーグ・九州アジアリーグの理事に就任が発表された。その他、琉球大学客員教授、明治大学MBAビジネススクール講師として教鞭をとるなど、業種業界を超えた幅広い分野で活躍している。

CREDIT
interviewer: Isako Yamazaki
writer : Rieko Narita
editor : Takushi Yanagawa
director : Yuya Karube
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